注目のトピックス - 花粉症とその対策 | 奈良市学園前駅の耳鼻咽喉科・アレルギー科『こばやし耳鼻咽喉科』
スギなどの特定の花粉によって起こる季節的なアレルギー性疾患で、くしゃみ・鼻みず・鼻づまり・目のかゆみ・充血などを主な症状とし、頭痛や全身の倦怠感を訴える人もいます。
花粉はとても小さな物質です。スギ花粉を例に挙げると、直径はおよそ30マイクロメートル(1マイクロメートル=1ミリの1000分の1)しかありません。花粉は上昇気流に乗って上空まで飛んでいき、少しずつ落ちてきます。そのため空気中にはたくさんの花粉が舞っていることになります。私たちは呼吸などによって知らず知らずのうちに多くの花粉を体内に取り込んでいるのです。
こうして体内に入り込んだ花粉は、まず、鼻の粘膜にくっつきます。実は花粉にはアレルギー反応を起こしやすい物質(タンパク質)が含まれています。また花粉の種類によってアレルギー反応を起こしやすい花粉、起こしにくい花粉があります。前者の代表例がスギやヒノキなどです。
もう少し詳しく書きますと、花粉症は免疫反応によって引き起こされます。免疫反応とは、私たちの身体に備わった防衛反応のことです。体内に侵入してきた細菌やウイルス、異物を「自分のものではない」と見分けて排除する反応です。さらに二度目以降の侵入時にすばやく対応できるように、その物質を認知して記憶しておくのも、免疫の役目です。侵入してきたウイルスや異物を抗原(原因物質)といい、抗原と結びついて、抗原を排除する物質を抗体といいます。抗原と抗体は鍵と鍵穴のような関係で、抗原と抗体の結びつきに限定されます。
まず、花粉が空気と共に吸い込まれて、鼻の粘膜に張り付きます。そして、花粉からタンパク質が溶け出して、体内に入るわけですが、このタンパク質は人体にとっては異物(→抗原)であるため、抗原を察知したリンパ球(白血球の成分の一つ)は、その抗原にあった抗体を作り、これに対抗しようとするわけです(免疫反応)。この抗体が体中のあちこちにある肥満細胞(マスト細胞ともいいます)の表面にある受容体(レセプター)にくっつきます。これを専門用語では「感作」といいます。この状態で、次に同じ抗原が入ってくるのをじっと待ち構えているわけです。そして再び抗原が侵入してくると、抗体は抗原と結びつき、肥満細胞に信号が送られます。やっかいなのは、信号を受け取った肥満細胞は、さまざまな炎症を起こす化学伝達物質を出すのです。この化学伝達物質がヒスタミンやロイコトリエンです。
ヒスタミンが鼻の奥にある三叉神経の末端を刺激すると、くしゃみが出ます。さらにくしゃみの反応で鼻水も出てきます。これは、抗原を排出しようとするためでもあります。目も抗原を洗い流すため涙を出すのです。また、化学伝達物質は直接、鼻のうっ血や浮腫を引き起こすため、鼻もつまるのです。
スギ花粉以外にも花粉症を引き起こす花粉はたくさんあり、ヒノキ、シラカバ、イネ、ブタクサなど50種類以上もの花粉が報告されています。
樹木:スギ、ヒノキ、シラカパ、コナラ、クヌギなど。(2月から5月にかけて開花)
イネ科の植物:カモガヤ、オオアワガエリなど。(2月から6月にかけての初夏に開花)
その他の植物:ブタクサやヨモギなどのキク科の植物。(8月から10月にかけて開花)
また、日本だけではなく、外国の例を挙げますと英国ではカモガヤが,米国ではブタクサが主な原因とされています。
これらの花粉に共通する特徴があります。それは、風によって花粉をばらまく風媒花が多いという点です。風媒花のほかに虫が花粉を運ぶ虫媒花がありますが、花粉症を起こす種類は多くありません。
ではなぜ、スギ花粉による花粉症患者が多いのでしょう。その理由の一つは、花粉の量と関係するといわれます。戦後、日本は大量のスギを植林してきました。その結果、あちこちにスギ林が生まれ、それに伴い、飛散する花粉の量もものすごく増えていきました。少量ならアレルギー反応を起こさない人でも、大量に吸い込めば、アレルギー反応が起こってしまいます。このような理由からスギの花粉症の患者が増えていったのです。 特に奈良県はスギ花粉の多い地区ですので、スギ花粉症の方は早めの受診と花粉症対策が必要です。なお、ヒノキはスギよりやや遅く昭和40年代に多く植林されています。最近では植林される面積がスギを上回っており、今後更に増加すると考えられています。
また、花粉症に限りませんが、アレルギーを起こす物質(抗原)に過剰に反応してしまうアレルギー体質が現代人に増えてきたということも一因に挙げられます。
いわゆる抗ヒスタミン薬を花粉が飛散開始する2週間前からのみはじめます(症状の出る前に)。こうすることで、症状が出てから飲み始めるのに比べ症状が軽くすむことが多いとされています。ただ、抗ヒスタミン薬は眠くなるタイプが多いのでクルマの運転や細かい作業などには注意が必要です。また、最近は眠くなりにくいタイプの薬剤も出ていますので御相談ください。
局所ステロイドスプレーです。これは、内服用のステロイド剤に比べると使用量が微量であり、また、局所で使用されることから全身での副作用が少ないという利点があります。局所ステロイド薬の通常の使用量では副作用はほとんど無いくらいです。花粉症においては有効な薬剤ですが、定められたとおりに使用することが大切です。
はじめに断っておきますが、これは学会では認められていない治療法です。花粉症も注射を打てば治るという噂があるようですが、上述の鼻スプレーによるステロイドの微量な局所投与とは異なり、強い副作用が起こる可能性が否定できない危険性の高い方法と考えます。噂を鵜呑みにすることはとても危険なことです。
レーザー光線で鼻の粘膜をやんわりと焼く方法です。これにより、花粉(アレルゲン)が入ってきた時の粘膜の反応を抑えることができます。結果的に、鼻水、鼻づまり等の症状がおきにくくなります。レーザーで焼いた直後は鼻の粘膜がかさぶたのような状態になり、鼻づまりの症状が強くなったように感じることもありますが、粘膜が再生されるとこのような感覚は無くなります。花粉症の場合、花粉の飛散の前(症状が出る前)にレーザー治療をした方が効果的です。効果の持続期間は人によって異なりますが、効果が薄れてきた場合は再度レーザー治療すれば大丈夫です。 当院では特に、花粉症を含むアレルギー性鼻炎に対して積極的にレーザー治療を行っています。保険適用です。詳しくは、レーザー治療のコーナーへ。